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『13階段』 

13階段 / 高野和明
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―――――「急斜面を転がり落ちるのは簡単だ。難しいのは平坦な道を歩くことだ。その道には、純一を人殺しとして忌避する人々が、石を投げつけようとして身構えている。


傷害致死で2年の実刑から釈放された主人公が、なじみの刑務官に誘われ「死刑囚の冤罪を晴らす」仕事に関わる様を、死刑制度の是非という複雑な社会問題にスポットライトを当てながら書き出されたサスペンス。スポットライトを当てると言ってもどちらかに偏った感じは受けないので、どういう感想を持ってもすらすらと読み進めることができます。
「一人の人を殺す」ということに関してここまで掘り下げた作品は、創造世界でも現実世界でも人がバタバタ死ぬのが当たり前になってる感がある最近では珍しいんじゃないかと思います。サブストーリーも充実していて感情移入できる。
どういう思考回路で動いてるんだかわからん人物がところどころ混ざってるのが難点といえばそうかも。
登場人物がそう多くないので、展開はだいたい予想通りに進むんですが 作者のミスディレクションが巧みなためラストで加速度的に惹きつけられます。
2003年に同名で映画化されていますが「あとがき」でボロクソ言われてます。たしかにそこそこ豪華なキャストなのに大して話題にもならなかったので若干不安なんですが、ちょっと観てみたいかも。


おすすめゲージ:■■■■■■■■□□
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『孤独の歌声』 

孤独の歌声 / 天童荒太
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―――――「全部、いままでの人間が聴いてきた音とは違う音を、この人は、聴いていて、それを書きとめているんだ。その音が、すごく、きれいでよ、怖くてよ、悲しくてよ、残酷でよ、いいんだよ・・・・・・ひとりぼっちの音なんだけどさ・・・・・・


コンビニ強盗と連続女性誘拐殺人の事件が絡み合う様を、それぞれの「孤独」を抱える女刑事、コンビニ店員、連続殺人犯の3つの視点から描いたサスペンス。
設定というか展開がちょっと都合よすぎたり、あまり「謎」が多くなかったりとサスペンスとしての弱点はあるものの、人物描写が濃密で、読んでてキャラの頭の中までリアルに再現できます。伏線の張り方もうまくて、読み返しても楽しめそう。
こういうジャンルの作品は最後のほうでただのドタバタ劇になってそのまま終わることが多い気がしますが、これはしっかり最後まで「孤独」やある葛藤へのこだわりを捨てていなく 丁寧に描ききっているので、扱った題材のディープさを考えると非常にすっきりした読後感を持つ良作やと思います。
ただ、肝心の「孤独の歌声」の設定があまりに陳腐で取って付けたようなもので、そのくだりは要らないんじゃないかとも思っちゃったり。。。

おすすめゲージ:■■■■■■■□□□

『女子大生会計士の事件簿』 

女子大生会計士の事件簿〈DX.1〉ベンチャーの王子様 / 山田真哉
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―――――「いい?私たちは経済の世界に一つしかない鏡なの。企業の良い所も悪い所もそのまま映し出す真実の鏡。鏡は決してしゃべらないし動かない。でも、絶対嘘はつかないから、みんな信頼して鏡を見てくれるのよ。


女子大生にして公認会計士の萌実ちゃんが、後輩の相方主人公と監査に行った色々な企業で起こっている不正事件を暴き解決していく短編集。
作者の山田真哉氏はこのシリーズは何巻も出しているし漫画化もされてるし、さらに女子大生シリーズとは別の著書『さおだけ屋はなぜつぶれないのか?』もクリーンヒットを飛ばし、テレビにも出演したりしよるまさに今をときめくイケメン会計士。
でも物語を書く能力は全然ないなーというのが正直な印象でごめんなさい。
出だしからそれに気付いて、「会計士の仕事ってこういうことやるんだー」というただの教養本として読んでました。純粋な小説としてはキャラ作りもテンポも構成も意外性もあったモンじゃないので「~~の事件簿」という言葉に惹かれて買うのはヤメておいたほうが無難です。原作者として出版に携わればもっと売れるんじゃないかなぁ・・・とか思ってみたり。
章末や巻末に会計士の使う用語や仕事内容の注釈が入っていて、そっちに興味のある人の勉強にはなりまうす。

おすすめゲージ:■■■■□□□□□□

『火の粉』 

火の粉 / 雫井脩介
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―――――「隣の男・・・・・・武内がこちらを見ていた。思わず力負けしてしまうような鋭い視線で、雪見は瞬間的に目を逸らしていた。何だ、あの陰気な眼は・・・・・・?


死刑をめぐる裁判の被告人と裁判長が、逆転無罪判決の数年後、再会した時から日常を病んでいくミステリー。
作者は写実的な表現が巧くない反面、人間の内面の微妙な心情、その変化の表現が緻密で驚きました。そういうタッチといい題材といい、正に現代の小説って印象。
半分くらいまでは登場人物の苛立ちとかストレスの話ばかりなので、正直言って読んでても気分が重くなります。後半はいろいろ展開も見せるし、波に乗るように読み終わる感じ。
ミステリーとしての要素部分は、鳥越というキャラがいきなり出てきていきなり解決に持ってった感が強いんですが・・・
あとは尋恵や俊郎あたりとくに、キャラが最初と最後ではかなり変わってしまってるのは頂けない感じ。おれ的に最後まで気に入らなかったのは俊郎の性格でしたえへへ。
文庫にしては厚い方なので、いちミステリをそんな分量で読むのが億劫な人もいるかも。でも結構すいすい読めます。
ついこの前2時間ドラマ化もしたみたいだけどそれは観てないや。

おすすめゲージ:■■■■■■■□□□

『春琴抄』 

春琴抄 / 谷崎潤一郎
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―――――「佐助、それはほんとうか、と春琴は一語を発し長い間黙然と沈思していた佐助は此の世に生まれてから後にも先にも此の沈黙の数分間程楽しい時を生きたことがなかった


商人の大家に産まれた才色兼備の盲人春琴と、彼女に幼い頃から仕え生涯に渡り身を削るような奉公をした佐助の物語。
物語といっても実話で、登場人物の「佐助」が後に書いた伝記や、その家に仕えていた女性の話等を基に、谷崎潤一郎が味付けをし「春琴」の一生を描いた、といった作品です。(あれ・・・実話でいいんだよね?これ)
谷崎の文があまりに耽美派そのものなので感化されないようにスパッとレビューすると、あらゆる方面の才能とそれに勝る美貌に恵まれた春琴がそれを失う時、その時の描写がそれまでの文をすべて引き立て役にして重い光を放ちます。その後の佐助の行動も魅力的。 生きてる間決して到達することのないだろうものに触れた感覚、ひとまず高く評価するしかできないです。
ちょっと文体が古い上に独特で、句読点が十何行と無いなんてことはザラなので読み進めるうちに若干「読み解く」といった感じが出てきます。それは個人的には面白かったけど、面倒だって人もいるかも。

おすすめゲージ:■■■■■■■□□□
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